川井憲次コンサート2007 Cinema Symphony
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国立大ホールで 
ついに始まる“一夜だけの宴”。第一回目は思いがけずスタッフとなり、リハーサルや準備などについて筆者が体験したことを記した。変わって今回はコンサートの【第一部】の模様について、一人の観客として観てきたことをお伝えしていこう。

着席

 気がつくと開演を知らせるブザーが鳴っている。それを聞きながら小走りで劇場の中に駆けていく。さっき覗いた時はまばらだった客席がびっしりと観客で埋まっている。それを見てさらにあせる。こんな時普通ならパニックになりそうなものだが、事前に自分の席を確認しておいたので迷う事無くたどり着くことが出来た。幸運なことに私の席は前から2列目(しかも真ん中辺り)なので当然のごとくアーティストは目の前だ! 西田社中の民謡コーラス、和太鼓の茂戸藤浩司さん、数々の豪華ゲスト……そしてもちろん川井憲次さん。もう、ここからならバッチリ見える!! しかし、ここでちょっと落ち着いて周囲を見てみる。拡張された広いステージの端から端まで楽器が置かれている。これでは前列のアーティストでも一度に観ることはできない。さらにあまりにも前過ぎるため奥のオーケストラやコーラスがほとんど見えない……やはり今回は112名という大編成の演奏者が、さまざまな楽器でメロディを奏でる様子も見てみたい。かといって後ろの席ではアーティストからは遠くなる(なんという贅沢な悩みだろう!)。結局どちらも一長一短だろうか。コンサートを観にこられた方で、似たようなもどかしさを抱かれた方もおられたと思う(逆にもっと前で見たいとかね)。この辺りはコンサートDVDに期待しよう!
開演

 席まで走ってきたせいなのか、いよいよ始まる!と胸が躍っていた為なのか心臓がドキドキしている。そして出演者が一人二人と舞台に現れる。未だ胸の鼓動が収まらないうちに、[Unnatural City II (2002 Ver.)]が流れ始め【第一部】がスタート! 幻想的な雰囲気が漂いいくらか気分が落ち着いてくる。と、しばらくして舞台の左右から静かに西田社中のみなさんが最前列中央に並び始めた(おやっ!? 揃いの和服姿!……カッコイイ!!)。15名のメンバーが揃うや否や[百禽 Hyakkin]を唄い始め、静かな曲から一転パワフルな民謡コーラスが会場に響きわたる!(この曲は2005年に開催された【愛知万博】の『めざめの方舟』で使われた) 興奮のあまり私は一瞬我を忘れた(これだ! これが聴きたかったんだ!)。私と同じようにこの生歌を聴きたいがためにコンサートにこられた方も多かったのでは? 西田社中の方々も晴れの舞台でとても楽しそう。茂戸藤さんが太鼓を叩く。腕ふっと〜い! 力強く演奏する姿はまるで格闘家のようだ。と、ここで突然横から黒い人影が! 撮影用のカメラクルーがレールに乗って入ってきたのだった。右に左にと移動する。“働く男”な感じで興味が湧き、ついつい目がそちらに行ってしまうのであった(いかん、いかん。今日目の前で起きていることは次の機会があるかわからないのだ。コンサートに集中しないと!・笑)
 演奏終了後、川井さんが観客にあいさつする。いつものようにニコニコされているが、久しぶりのコンサートであるし、やはり緊張している……ように私には見えた。
 次の曲は[Theme of PATLABOR 2 (Kenji Kawai Ver.)]と[ヘヴィ・アーマー (1999 Ver.)]。これらは名作との誉れも高い劇場版『機動警察パトレイバー』の1・2作目からの選曲で、川井さん自身も思い入れが深いそうだ。さらに[ヘヴィ・アーマー]では曲が使われている場面がスクリーンに映し出され、オープニングシーンを生で再現! 会場にはこの二つの劇場作品で“川井憲次の音楽”に触れたという方も多くいたと思うし、まさにファン感涙の演奏と演出! 前の列の人が曲に合わせて体でリズムを取っている……と、思ったら自分もであった。あまりノリノリだと周りの方に迷惑かもしれない。手を動かすぐらいにしておこう(汗)。
濃密

 拍手の後、ゲストの児島由美さんが紅いドレス姿で登場し、川井さんから紹介をうける。聞けば川井さんとは長年のお知り合いとのことだ。思い出話で盛り上がったりしてなんだかほんわかムード。そして[御先祖様万々歳!]を熱唱。
 この後は[天使のキス〜永遠の別れ]、[All the criminals][a battle of witsメドレー〜Seven Swords' Victory]など数々の映画音楽のオンパレード。しかも絶妙に編集された映像付き。これまでたくさんの作品を手がけている川井さんだが、『ガラスの脳』のような純愛映画はめずらしいとのこと。『美しき野獣』では哀愁漂う曲と壮絶なシーンがピッタリはまっていて思わず感情移入! 『墨攻』『セブンソード』は勇壮な曲とスケールの大きなバトルシーンの連続で体が熱くなる! この時川井さんはドラムなど打楽器を担当。外間弓子さんはパーカッションを担当していたかと思えば、シンバルになったりチューブラベルを叩いていたり。コーラスが効いているのもよく感じられた(やっと細かい所を見る余裕が出てきたか)。『美しき野獣』以降は外国映画であり、川井さんが国際的に活躍していることも改めて実感。
 8曲目の[陽炎]では川井さんが「30年前に丸井で姉に買ってもらった」というガットギターの演奏を披露。ゆったりした穏やかな音色。これまで聴いている側が圧倒されていた感もあり、ちょっと一息つけた気がする(なんとなくくつろいできてコーヒーでも飲みたいような気分……)。
 さてあっという間に【第一部】最後の曲となる。川井さんより西田社中のみなさんが改めて紹介された。川井さんとお仕事をするきっかけとなった『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の時は西田佳づ美さん、伊藤予示子さん、清水多永子さんの3人で収録し、5〜6回ダビングして曲を製作したそうだ。私は最初にこの映画を観て初めてこの民謡コーラスを聴いたときの、新鮮でもあり不思議でもあった感じを今でもよく覚えている。そして近未来を描いたあの映画にとてもよくマッチしていた。今回は15名のメンバーで[謡III -Reincarnation-]を再現。そう、“再現した”という表現が当てはまるように思う。
休憩

 ここで【第一部】が終了。休憩に入る。あまりの密度の濃い内容に思わず「フーッ」とため息をつく。周りからは「凄いなー」という声も聞こえてきた。ロビーで知人と歓談。相手もとても興奮しているのがわかった。その彼の一言。
「『墨攻』は燃えた〜! すぐDVDを借りて観たい!」
 音楽の力は偉大なのだ。 ----
(つづく。次回は12月19日更新予定)
ついにコンサートが始まった! ステージには数えきれないほどの楽器と演奏者が整然と並ぶ。照明でライトアップされた瞬間、目の前に今まで見た事のない壮大な光景が浮かび上がった。 西田社中の方々は揃いの和服姿で登場。写真中央で唄っている3名は左から清水多永子さん、リーダーの西田佳づ美さん、伊藤予示子さん。『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の時はこの3名で収録された。 舞台最前列で力強く和太鼓を叩く茂戸藤浩司さん。ラックには【Motofuji】の文字が見える。
ホール上段からステージを見ると、コンサートの規模が改めて実感出来る。舞台前列中央にゲストや民謡コーラス、左手にピアノやキーボード、右手に茂戸藤さんの和太鼓、中段にはパーカッションや打楽器、奥の段に管弦楽器や混声コーラスという配置であった。川井さんはギターを弾いたり打楽器やキーボドを演奏したりと大忙しだった。舞台手前にはDVD撮影用のカメラも見える。
楽器の数が膨大な為、PAのチャンネル数は150を軽く超えた。エンジニアさんの苦労も相当なものであったと思う。 川井さんとは長年のお知り合いという児島由美さん。児島さん作詞による『御先祖様万々歳!』を熱唱!
コーラスの広谷順子さん(左)と山田洋子さん(右)。広谷さんは15年前に開催された『機動警察パトレイバー』のコンサートにも参加している。 『ケルベロス 地獄の番犬』より[陽炎]でガットギターの演奏を披露する川井さん。穏やかな楽曲にくつろぎ、しばしコンサートホールにいることを忘れてしまった。 【第一部】最後の曲は[謡III -Reincarnation-]。スクリーンに映し出された月が雰囲気をさらに盛り上げ、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の世界をみごとに再現していた。
この日会場には3000人の観客が駆けつけ、一夜限りの“川井憲次の世界”を堪能。一曲終わるごとに大きな拍手を贈っていた。

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